
七十二候:蒙霧升降/季語:駒牽・望月の駒・秋の馬
八月の中ごろ、諸国の牧(まき)から朝廷へ馬が献上されました。駒牽です。
信濃の望月の牧、甲斐の柏前の牧、武蔵の小野の牧——各地の牧から選ばれた馬が、はるばる都へ牽かれてきます。天皇がこれをご覧になり、公卿たちに分け与える。
逢坂の関の清水に影見えて
今や引くらむ望月の駒 紀貫之(拾遺和歌集)
逢坂の関の清水に姿を映して、今ごろ望月の駒が牽かれているだろう——都にいながら、遠い関を越えてくる馬を想像している歌です。
平安の貴族は、ほとんど都から出ませんでした。だから地方は、献上されてくるものを通してだけ知っている。馬、絹、米、魚。
物が来る。それが世界の広さを知る手立てでした。
今日の一語 望月の駒(もちづきのこま)…… 信濃・望月の牧から献上された名馬。歌の言葉としても定着しました。
