
七十二候:蒙霧升降/季語:氷室・氷・冷たきもの
冷蔵庫のない時代、平安の宮中には夏に氷がありました。
冬のあいだに山あいの池で氷を切り出し、氷室——山の斜面に掘った穴に、藁や茅を敷いて貯蔵する——に納めておく。そして夏、それを都まで運ばせるのです。
氷室は各地にあり、朝廷が管理していました。運搬の途中でどれだけ溶けるかを計算に入れて、量を決める。国家の事業として氷を運んでいたわけです。
そこまでして手に入れた氷を、どう使ったか。『枕草子』の「あてなるもの(上品なもの)」に、こうあります。削り氷に甘葛をかけて、新しい金属の椀に入れたもの。
千年前のかき氷です。しかも、いちばん上品なものの例として挙げられている。
暑い日に冷たいものを食べる。この当たり前を、当時は国を挙げて実現していました。
今日の一語 氷室(ひむろ)…… 冬の氷を夏まで貯えておく穴蔵。地名として今も各地に残っています。

