
七十二候:蒙霧升降/季語:扇・白扇・扇の風
扇は、日本で生まれた道具です。中国から来たのは団扇(うちわ)のほうで、折りたためる扇は、日本の発明といわれます。
平安の扇には二種類ありました。檜扇(ひおうぎ)——薄い檜の板を綴じ合わせたもの。儀式に用い、装束の一部です。もう一つが蝙蝠扇(かわほりおうぎ)——骨に紙を貼った、片面だけのもの。夏に使う略式の扇です。蝙蝠(こうもり)の羽に似ているから、その名がつきました。
そして扇は、あおぐためだけの道具ではありません。顔を隠す。物を載せて渡す。歌を書きつけて贈る。
紙が貼ってあるということは、そこに書けるということです。扇に和歌を書いて手渡す——手紙であり、贈り物であり、顔を隠す道具でもある。
九月九日の重陽の日に、この扇を納めます。それまで、ひと月足らずです。
今日の一語 蝙蝠扇(かわほりおうぎ)…… 骨の片面にだけ紙を貼った夏扇。「かわほり」は蝙蝠のこと。
