
七十二候:楓蔦黄/季語:牡蠣・牡蠣船・冬の海
「Rのつかない月は食べるな」といわれます。英語で綴りにRのない五月から八月(May〜August)は産卵期で味が落ちるため。逆にいえば、今からが本番です。
牡蠣は、日本でもたいへん古くから食べられてきました。縄文の貝塚から大量に出てきます。ただし平安の貴族の膳に、生牡蠣が上ることはありません。都は海から遠く、生ものを運ぶ手立てがなかった。
海のものが都に届くには、干すか、塩に漬けるか、それしかない。平安の食は、保存技術の限界がそのまま献立になっていました。
海のそばで採れたてを食べる——それは当時、都のいちばん高い身分の人にも、できないことでした。私たちのほうが贅沢をしています。
今日の一語 海鼠腸(このわた)…… 海鼠(なまこ)の腸の塩辛。平安の記録にも見える、古い海の保存食です。
