
七十二候:鴻雁来/季語:夜寒・秋の宿
十月一日の更衣で、部屋は冬のしつらえに変わりました。では、具体的に何が変わったのでしょう。
御簾は、夏の粗く編んだものから、目の詰んだものへ。几帳の帷(かたびら)は薄物から厚手へ。褥(しとね)——座るための敷物にも、綿が入ります。そして畳。当時の畳は部屋一面に敷くものではなく、座る場所にだけ置く「座具」でした。これにも冬用の厚い縁(へり)のものがある。
床全面に畳を敷き詰めるようになるのは、ずっと後の世です。平安の室内は、板の間に、必要なところだけ畳や褥を置いた。
だから寒い。けれどそのぶん、どこに座るかが、身分と関係のすべてを表しました。 畳が置かれている場所が、その人の場所なのです。
今日の一語 褥(しとね)…… 座るため、また寝るために敷くもの。今の座布団と敷布団の、両方の祖先にあたります。

