
七十二候:雷乃収声/季語:秋の香・香を焚く
平安の香りは、薫物(たきもの)でした。何種類もの香木や香料を粉にし、蜜や梅の果肉で練り合わせて丸め、灰に埋めた炭火でゆっくり温める。焚くというより、温めて香らせるのです。
代表的な六種を六種の薫物(むくさのたきもの)といいます。黒方(くろぼう)、梅花、荷葉(かよう)、菊花、落葉、侍従(じじゅう)。このうち秋の香りとされるのが菊花と侍従、そして落葉です。
「侍従」は、秋のもの寂しさを表す香とされました。香りに季節があり、さらにその季節の感情まで割り当てられている。
しかも配合は各家の秘伝で、その人だけの香りになります。誰が通ったか、香りで分かる。物語の中で、几帳の陰の人が香りで知れてしまう場面があるのは、そのためです。
今日の一語 空薫物(そらだきもの)…… どこで焚いているとも知れぬように、部屋にほのかに香らせること。香りの、いちばん上品な使い方とされました。

