
七十二候:蟋蟀在戸/季語:蟋蟀・冷やか・秋深し
虫が、戸口のあたりで鳴くころ。野から、人の家のそばへ寄ってきています。寒くなったからです。
ここで一つ、大事な但し書きがあります。古語の「きりぎりす」は、今のコオロギを指します。 今のキリギリスは、当時「はたおり」と呼ばれました。名前が、途中で入れ替わってしまったのです。
きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに
衣かたしきひとりかも寝む 藤原良経(新古今和歌集)
この歌の虫も、コオロギです。霜の降りる夜、衣を片方だけ敷いて、ひとりで寝る——「かたしき」は、本来なら二人で敷き交わす衣を、片方だけ敷くこと。
虫の声が、家の戸口まで来ている。その近さが、かえって独りであることを際立たせます。
今日の一語 衣かたしき…… 衣を片方だけ敷いて寝ること。ひとり寝を表す、和歌の定型表現です。

