
七十二候:霜始降/季語:柚子・青柚子・柚味噌
そろそろ柚子が色づきます。日本の料理は、この一片の皮で季節を出してきました。
柚子は、たいへん古くから日本にあります。奈良時代の記録にも見え、平安の食にも登場する。当時は今のような調味の使い方だけでなく、薬として、また香りのものとして扱われました。
面白いのは、日本の柑橘の使い方です。果肉を食べるより、皮の香りを使う。柚子、橘(たちばな)、酢橘(すだち)——いずれも主役は香りのほうです。
平安で特別だったのは橘でした。常緑で、実も花も香る。「非時香菓(ときじくのかくのこのみ)」——時を選ばず香る実、と呼ばれ、不老不死の実として神話に出てきます。紫宸殿の前に「右近の橘」が植えられているのは、そのためです。
香りで季節を出す。ずいぶん贅沢な食べ方をしてきました。
今日の一語 非時香菓(ときじくのかくのこのみ)…… 橘の古名。時季に関わりなく香る実、という意味です。
