
七十二候:鶺鴒鳴/季語:虫の声・鈴虫・松虫・虫籠
秋の夜、平安の人は虫を捕まえて籠に入れ、鳴かせて楽しみました。虫合といいます。
童(わらわ)に野へ行かせて虫を採らせ、籠に入れて庭に放つ。あるいは持ち寄って、どちらの虫の声が優れているかを競う。歌を添えて競う「合わせもの」——歌合、絵合、貝合、香合——の一種です。
面白いのは、日本人が虫の声を「音(ね)」として聞いてきたことです。騒音でも自然音でもなく、鑑賞の対象として。松虫、鈴虫、轡虫(くつわむし)、蟋蟀(こおろぎ)——鳴き声で名を付け分けた文化は、そう多くありません。
今夜、窓を少し開けてみてください。千年前の人が籠に入れてまで聞きたがった音が、ただで聞こえます。
今日の一語 虫の音(むしのね)…… 虫の声を「音」と呼ぶこの言い方に、聞く姿勢そのものが表れています。

