9月3日|秋刀魚(さんま)

四種器

七十二候:禾乃登/季語:秋刀魚・新秋刀魚

秋の魚といえば、まずこの一尾。北の海で脂をたくわえ、南下してくる途中のものがいちばんおいしいとされます。

ところが平安の貴族は、秋刀魚を知りません。都は海から遠く、運べる魚は干物か塩蔵に限られました。加えて仏教の影響で、獣肉や多くの魚は遠ざけられています。彼らの膳の中心は強飯(こわいい=蒸した米)、干物、木の実、そして塩・酒・酢・醤(ひしお)を自分で付けて味を調える——調味は各自の手元、というのが当時の作法でした。

味の付いた料理が出てくるのは、ずっと後の世のこと。「薄味を好んだ」のではなく、「味は自分で決めるもの」だったのですね。

脂ののった秋刀魚を、千年前の人は食べられませんでした。そう思うと、今日の一尾が少し違って見えます。

今日の一語 四種器(ししゅき)…… 塩・酒・酢・醤を入れた小皿の一そろい。平安の食膳に必ず添えられた、自分専用の調味台です。

七日ぶんを、火曜の朝に。

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