
七十二候:禾乃登/季語:夜長・虫の声
平安の宮廷では、音楽がとても近いところにありました。管(笛)と絃(琴・琵琶)を持ち寄って合わせる遊びを、管絃といいます。
大切なのは、これが聴くための音楽ではなかったということです。名手の演奏を拝聴するのではなく、その場にいる人が自分の楽器を持って加わる。笛が吹けること、琴が弾けること、和歌が詠めること——これらは芸ではなく、教養であり、社交の作法でした。
秋は管絃の季節です。夜が長く、虫が鳴き、月が明るい。演奏を邪魔するものが何もない。
誰かの技を見に行くのではなく、自分も鳴らす側にいる。この距離感は、今の私たちがいちばん失ったものかもしれません。
今日の一語 管絃(かんげん)…… 管楽器と絃楽器の合奏。「管絃の遊び」といえば、演奏会ではなく、集まって鳴らす夜のことです。
