
七十二候:涼風至/季語:涼風・秋めく・残暑
立秋から数日。七十二候は「涼しい風が至る」と言います。
もちろん、まだ暑い。けれど暦は、体感ではなく兆しを見ています。日の入りが早くなった、朝の空気が少しだけ違う、風が乾いてきた——そういう小さな徴(しるし)を拾って、名前にする。
秋来ぬと目にはさやかに見えねども
風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行(古今和歌集)
目には何も見えない。けれど風の音だけが、もう秋になっている。見えないものを音で察する。 この感じ方が、のちの日本の美意識の土台になりました。
暦はいつも、実感より半歩早い。それは間違っているのではなく、変わり目を兆しの時点で取るからです。
今日の一語 新涼(しんりょう)…… 秋のはじめの、うれしい涼しさ。暑さの中に見つける最初の秋です。

