
七十二候:菊花開/季語:夜長・秋の宴
平安の宮廷で、もっとも格の高い楽器のひとつが琵琶でした。
「琵琶法師」の印象から、男性の語りの楽器と思われがちですが、それは後の世の話です。平安では女性も琵琶を弾きました。『源氏物語』の明石の君は琵琶の名手として描かれ、その音が光源氏の心を捉えます。
当時の教養では、何の楽器を弾くかが、その人を語りました。 琴(きん)は最も格式高く、筝(そう)は姫君の楽器、和琴(わごん)は日本古来のもの、笛は男性の必須教養。琵琶はその中でも、深く落ち着いた音として重んじられます。
そして楽器は、姿を見せずに弾かれることが多かった。御簾の内から音だけが届く。顔を知らないまま、音でその人を知る。
物語の恋が音から始まるのは、そういう聴き方があったからです。
今日の一語 掻き合はせ(かきあわせ)…… 本曲を弾く前の、調子を確かめる短い爪弾き。この数音がいちばん美しい、といわれます。
