
七十二候:天地始粛(てんちはじめてさむし)/季語:二百十日・野分(のわき)
立春から数えて二百十日目。ちょうど稲の花が咲くころに、台風がやってくる。昔の人はその一致を暦に刻みつけ、農家の厄日としました。
平安では、この季節の大風を野分(のわき)といいます。野の草を分けて吹く風、という意味です。『源氏物語』には「野分」と題された巻があり、嵐の翌朝、荒れた庭と乱れた室礼(しつらい)のなかで、思いがけず人の素顔が見えてしまう——そういう一日が描かれます。
嵐は、ふだん隠れているものを露わにします。御簾が吹き上がり、几帳が倒れ、見えないはずのものが見えてしまう。台風を「野分」と呼んだ人たちは、風の被害だけでなく、風がめくっていくものまで見ていたのですね。
今日から、季節が動きます。
今日の一語 野分(のわき)…… 秋の暴風。「野分のまたの日(=台風の翌日)」は、それだけで秋の情景を表す言葉です。

