
七十二候:蟋蟀在戸/季語:夜寒・秋灯
平安でもっとも読まれた漢詩集は、白居易(はくきょい)の『白氏文集』でした。
その影響の大きさは、想像を超えます。『源氏物語』の冒頭、桐壺の巻——帝が寵愛した女性を失って嘆く、あの物語の下敷きは、白居易の「長恨歌」です。玄宗皇帝と楊貴妃の物語。紫式部は、それを承知で書き、読者もそれを承知で読みました。
漢詩は男性の教養とされていましたが、女性たちも読んでいたのです。ただし、読めることを表に出すのは慎まれました。清少納言が「香炉峰の雪」の一句を身振りで示して見せた逸話が有名なのは、知っていることを直接言わずに示したからです。
教養は、披露するものではなく、通じ合うものでした。
今日の一語 長恨歌(ちょうごんか)…… 白居易の長編詩。「天に在らば比翼の鳥、地に在らば連理の枝」の句で知られます。

