
七十二候:菊花開(きくのはなひらく)/季語:秋灯・夜長
平安の女性の顔は、私たちの感覚とはかなり違いました。
白粉(おしろい)で顔を白く塗り、眉を抜いて、額の高い位置に薄く描く(引眉/殿上眉)。歯は鉄漿(かね/お歯黒)で黒く染める。唇には紅を、実際の唇より小さく。
なぜこうしたのか。理由のひとつは、灯りです。当時の室内は、油皿の灯り一つ。たいへん暗い。その暗さのなかで、いちばん美しく見える顔が、あの化粧でした。白は闇に浮かび、黒い歯は口元を影として引き締め、高い位置の眉は表情を穏やかに見せる。
明るい昼の光のもとで見れば、異様に映るかもしれません。けれどあれは、昼に見せる顔ではなかったのです。
装いは、いつでも「どこで、どんな光の下で見られるか」とひと組でできています。
今日の一語 引眉(ひきまゆ)…… 眉を抜き、額に描いた眉。「殿上眉(てんじょうまゆ)」ともいいます。

