
七十二候:鴻雁来/季語:新蕎麦・走り蕎麦・蕎麦の花
夏に播いた蕎麦が、実って出回るころ。香りがいちばん立つ時期です。
蕎麦は、たいへん古くから日本にありました。ただし平安のころは、麺ではありません。蕎麦がき——挽いた粉を湯で練ったもの、あるいは粥として食べていました。今のように細く切った「蕎麦切り」が登場するのは、ずっと後の世のことです。
蕎麦が重んじられたのは、痩せた土地でも育ち、播いてから二、三か月で穫れるからでした。米が不作の年、蕎麦が人を生かしてきた。
救荒作物——飢饉のときに命をつなぐ作物、という言い方があります。今は香りを楽しむものになりましたが、この植物の来歴は、そちらが本筋です。
新蕎麦の香りの奥には、そういう時間があります。
今日の一語 蕎麦がき…… 蕎麦粉を湯で練ったもの。麺以前の、蕎麦の本来の食べ方です。
