
七十二候:禾乃登/季語:秋簾(あきすだれ)・秋の風
寝殿造には壁がほとんどありません。空間を区切るのは、御簾(みす)、几帳(きちょう)、屏風、衝立——すべて置いたり垂らしたりするだけの、動かせる仕切りです。だから季節ごとに、部屋そのものを「着替え」させました。
夏のあいだ涼しく通していた設(しつら)えを、この時期から少しずつ改めます。氷の道具を下げ、簾を巻く高さを変え、几帳の帷(かたびら)を秋のものに替えていく。建物は変わらないのに、置くものだけで季節が変わるのです。
固定した部屋を持たない、ということは、毎年季節ごとに空間を作り直すということでした。手間はかかります。けれどそのぶん、暮らしは季節から離れられません。
しまうものと出すものを決めるのが、九月最初の仕事でした。
今日の一語 室礼(しつらい)…… その場を、その日の用と季節に合わせてととのえること。調度を置くことが、そのまま設計でした。

