
七十二候:禾乃登/季語:稲の花・穂波
「禾」は、のぎ——稲や粟の穂先にある細い毛のことです。その禾が実る、という候。
稲の花をご覧になったことがあるでしょうか。ごく小さく、白く、開いているのはたった二時間ほど。しかも咲くのは晴れた日の午前中だけです。あんなに広い田で、あれほど目立たない花が咲いている。
平安の貴族は、稲作そのものは見ていません。けれど彼らの暮らしは、地方から納められる米の上に完全に乗っていました。宮中の年中行事のかなりの数が、稲の実りを祈るためのものです。二月に祈年祭(としごいのまつり)で祈り、十一月に新嘗祭(にいなめさい)で報告する。一年の行事は、稲の暦でもあったのです。
今日、田はいちばん静かに、いちばん大きな仕事をしています。
今日の一語 禾(のぎ)…… 穂先の細い毛。「稲」「秋」「穂」——多くの漢字が、この禾を部首に持っています。

